「一般社団法人 全国家事代行サービス協会」という法人組織があります。
社名に「家事代行サービス」と入ってはいますが、一般客にサービスを提供する会社ではありません。この会社の事業対象は家事代行業者です(いわゆるBtoB=企業間取引)。
業務内容をひと言で表わせば、日本の家事代行業界をより良くすることでしょうか。
そのため私たち一般消費者には無関係。……のはずですが、家事代行業者の宣伝文句でたまに名を目にすることがあります。
当社は「一般社団法人 全国家事代行サービス協会」に加盟しています!
さらに同協会から「認証」を受けています!
「協会」とつく名称。加えて「一般社団法人」ということも考えると、なんだか信頼できそうな感じはあります。その辺、あなたはどう思われるでしょうか。
たしかに社団法人の協会って、少し公的な響きがあるかも……。
結論から言えば、私は全国家事代行サービス協会に加盟している会社(特に認証を受けている会社)は、一定以上の会社である可能性がやや高いのではと考えています。
もちろん、あくまで可能性の話であり、100%無条件に信頼できるものではありません。選択する際の一要素になるというイメージです。
本ページでは、そんな全国家事代行サービス協会や、加盟業者・認証業者(後述)について詳しく見ていきたいと思います。
そもそも全国家事代行サービス協会ってなに!?
冒頭にて「日本の家事代行業界をより良くするための会社」と書きました。これだけでは抽象的すぎて、どんな会社かさっぱり分かりませんよね。
もう少し詳しくこの会社自体について深掘りしていきましょう。
業務内容
まずは全国家事代行サービス協会の業務内容を、より具体的に見てみたいと思います。
以下は同社公式サイトからの事業内容の引用です。
1.家事代行専門技術に関する研修及び市場開発の研究
協会のご案内|一般社団法人全国家事代行サービス協会
2.家事代行サービス認証基準の創設及び認証マーク取得に関する支援
3.家事代行サービス業の企業に関する相談
4.前各号に附帯関連する一切の事業
記載のされ方からして、おそらくは定款で定められている業務内容だと思われます。
やや小難しく書かれているので、分かりやすく書くとこんな感じでしょうか。
- 家事代行の技術に関する研修をするよ。業界全体の売上を伸ばす研究をするよ。
- 家事代行の認証制度の基準を作り、その取得を支援するよ。
- 家事代行業に関する相談を受け付けるよ。
- 上の1~3に関連することならなんでもやるよ。
家事代行業者の技術力を向上させたり、市場を発展する研究をしたり、認証制度という指標を作ったり、相談を受けたり……。
たしかに家事代行業界をより良くするための事業と言えそうですね。
役員はそうそうたるメンバー
全国家事代行サービス協会は、これまでにも述べているとおり一般社団法人。それには当然、経営陣=役員が存在します。
これがまたそうそうたるメンバーで構成されており、おどろくばかりです。
メンバーを見ていきましょう。
- 会長 ベアーズ 取締役副社長:髙橋 ゆき
- 副会長 ダスキン 吉川 礼子
- 副会長 フォー・リーフ 代表取締役:隅 淳一
- 理事 ミニメイド・サービス 取締役副社長:加藤 貴身
- 理事 アール・アソシエイツ 代表取締役:榊原 啓二朗
- 理事 ケアーサポート 代表取締役:水上 克美
- 理事 ミライド 代表取締役:安田 尚義
※2022年1月26日現在。敬称略
まず会長(=代表理事と思われる)は、家事代行業界では最大手クラスのベアーズの副社長:髙橋ゆき氏です。この業界で知らない人はいないほどの人物です。
テレビでも時折お見かけする、とても品のあるお方ですよね。
その他、家事代行業界にいれば誰もが知っている会社の代表格ばかり。つまりはこの業界で長くやっていて、実績&信頼度が高い方々が集まり組織が運営されているというわけです。
ただブームに便乗して出てきた素性のしれない人たちが作った会社ではありません。信頼性は非常に高いということですね。
非営利法人だけど一企業
信頼性もある会社みたいだし、実に高尚な事業をしていますね。
社団法人だから、非営利で公益性の高い事業をするんだっけ!?
このようにお考えになる方もいるかもしれませんが、社団法人に関する誤解を生みそうなので補足です。
まず、一般社団法人は非営利の法人です。ただし「非営利」という言葉の勘違いが多いかもしれません。
法律上の非営利の意味は「剰余金を構成員に分配しないこと」。簡単に言えば「利益を株主等に分配しないこと」を指します。利益を追究してはいけないというわけではありません。
つまり、
お金を稼ぐのはOK!
給料や役員報酬を支払うのもOK!(例え高額でも)
ということになります。事業はお金が無いとできませんから、営利企業同様、利益を追究しなければならないのです。
次に公益性についてですが、一般社団法人は必ずしも公益事業を行う必要はありません。つまり
自社に都合が良い事業(儲かる事業)を行ってOK!
となります。
利益を分配さえしなければ、株式会社と同じように事業をして良いということですね。
というわけで、一般社団法人=公益事業ではありません。私たち一般消費者にも利益のある素晴らしい事業を行っているとは思いますが、あくまで「一事業者」です。
会員制度と、認証制度がある
全国家事代行サービス協会は、事業のベースとして家事代行業者向けに以下の制度を設けています。
- 会員制度
- 認証制度
前者は協会の会員になること。言わば協会の考えに賛同することといっても良いでしょう。会員になることで各種サービスを受けられるメリットがあります。
後者は、家事代行サービスのクオリティを第三者審査により認証すること。質の高さを客観的に証明できるメリットがあります。
これら2点は協会において重要な要素ですので、次項より順番に説明していきたいと思います。
会員制度について
まずは会員制度から見ていきましょう。
全国家事代行サービス協会の会員制度には、以下の2つの種別があります。
- 正会員
- アソシエイト会員
会員はもちろん有料です。慈善事業ではありませんので当然ですね。
会員種別による受けられるサービスの違いは、公式サイトに記載されていません。それぞれ入会金や、入会の資格が異なることのみが明記されています。
正会員とは!?
いわずもがなですが、正式な会員ということです。
先ほどのとおり有料ですが、入会金30,000円に加え、月会費5,000円(2022/01/26執筆時)と、かなりリーズナブルです。この手の協会ではもっとお金がかかることもよく目にしますからね。
入会の資格は、創業3年以上の法人が最低条件です。既存の家事代行業者が加入する場合、大抵はこちらの正会員となるでしょう。
アソシエイト会員とは!?
準会員という位置づけになります。参考までにアソシエイト(associate)とは、仲間、賛同するなどという意味もあります。
費用は入会金15,000円に加え、月会費3,000円(2022/1/26執筆時)と、正会員よりも安くなります。
こちらは創業3年未満の法人でも可。加えて家事代行サービス業を始める予定の法人・個人事業主も可です。つまり「これから」の事業者向けというわけですね。
会員となれば各種サービスが受けられる
協会へ入会するメリットとして、以下が明記されています。※カッコ内は私が分かりやすく言い換えた補足です。
- サービスの品質を高める(技術やマナー向上の研修を受けられる)
- 消費者からの信頼を得る(認証制度を受けられる。取得を支援してもらえる)
- 業界の繋がりを深める(横の繋がりができ互恵関係が生まれる)
- 事業運営の効率化を図る(コンサルティングを受けられる)
もちろん、別途費用が掛かることが前提と思いますが、より良い家事代行業者になるためのサービスばかりです。
つまり入会している=技術向上に意識の高い会社である可能性が高いと言えるでしょう。
特に「これから」の会社にとっては、会員になることは願ったり叶ったり。両社&顧客にとってWin-Win-Winの良いサービスと言えそうです。
ただし会費だけ支払っているだけ、という幽霊会員がいるのもこの手の協会ではよくある話ですね。加盟するだけでもハクが付き、広告宣伝にも繋がりますのでメリットはあると思われます。
認証制度について
すでに簡単に触れましたが、全国家事代行サービス協会には認証制度というものがあります。
認証制度は、直接的に利用者の安心感に繋がる一大要素。同協会もかなり力を入れているように見受けられます。
以下、詳しく見ていきましょう。
認証制度の概要
認証制度は、全国家事代行サービス協会と日本規格協会が行う第3者認証サービスです。
第3者認証機関による審査に合格すると「認証事業者」として認証を受けることが可能。これを証明するのが、以下の認定証や、認証ロゴマークです。
i引用:認定制度とは|一般社団法人全国家事代行サービス協会
これらの提示により、一定の品質があることを消費者へ訴求可能となります。
要は家事代行の検定試験と、その合格証書みたいなものですね。
「英検1級の合格証明書」を見せれば、英語のスキルがあると客観的に証明できるのと同じです。
この認証を受けることで、家事代行業者は以下の様なメリットを受けられます。
- サービスの質の高さの証明
- 安心・安全性の証明
- 接客力の証明
審査を行うのは、先ほども挙げた一般財団法人日本規格協会です。同社は規格を定義する専門の会社。
身内ではなく、専門の第三者機関が認証をするため、その信頼性は高いと言えるでしょう。
ですので認証される=きちんとした業者だとお墨付きを得ることと同意です。
認証制度の申込要件
実は認証制度を申し込むために必要な資格、つまり申込要件は特に厳しいものではありません。
基本的には、12か月以上の家事代行サービス提供実績のある法人(反社などを除く)であればOK。必ずしも全国家事代行サービス協会の会員になる必要もありません。
つまりは、ほとんどの家事代行業者にチャレンジする資格があることになります。
とは言え12ヶ月程度のサービス提供実績では、スムーズな合格ができるかはまた別のお話。
しかしながら全国家事代行サービス協会はその取得支援も行っています。認証制度のオーナー(協会)の指導があれば、取得できる可能性は当然高まるでしょう。
審査・維持に結構なお金がかかる
12か月以上の家事代行サービス提供実績のある法人だったらたくさんの企業が認証を希望するのでは!?
……と思うところですが、実際はそんなことはありません。2022/01/26時点で認証事業者は10社しかないくらいですので。
というのも、認証を受けるには時間やお金を要するからだと考えられます。
そもそも認証制度自体、全国家事代行サービス協会の事業(=飯の種)の一つ。慈善事業ではありませんので取得するための審査には結構なお金がかかります。
手持ちの資料(2017年4月5日版)ですと、以下のような感じです。
初回審査料 | 300,000円~350,000円 |
サーベイランス審査料金 ※2年目以降、更新審査までの間に毎年一回の審査料 | 50,000円 |
更新審査料 ※3年目ごとに実施 | 300,000円~350,000円 |
特別審査料 ※特別な審査を行う場合のみ | 100,000円 |
1年あたりにならすと、10数万といったところでしょうか。ただし複数店舗がある会社の場合、審査対象店舗数が増すとより審査料が高くなります。概算ですが年あたり30~40万前後になることもありそうです。
ちなみにこれらは自力で取得するときの話です。認証取得の支援も依頼すれば、よりコストがかかることでしょう。
さらに言えば、単純な金銭的なコストだけではありません。度重なる審査に伴う事務・時間的コストも大きそうです。
認証を受けるのも、維持するのもそれなりに大変なのでしょう。事実、更新しない会社もありますよ(認証を返上する際も公表されるのでわかります)。
というわけで家事代行協会に加入している会社は安心できる!?
本ページの最初に私の意見は書いていますが、改めてこの問題について考えてみましょう。
はたして家事代行協会に加入している会社は安心できるのかどうか。できるだけ客観的かつ論理的に考えていきたいと思います。
役員企業はさすがに安心感がある
全国家事代行サービス協会の役員である方々が在籍する会社は、以下の7社です。
- ベアーズ(髙橋 ゆき氏)
- ダスキン(吉川 礼子氏)
- フォー・リーフ(隅 淳一氏)
- ミニメイド・サービス(加藤 貴身氏)
- アール・アソシエイツ(榊原 啓二朗氏)
- ケアーサポート(水上 克美氏)
- ミライド(安田 尚義氏)
これまで活動してきた信頼と実績があってこそ、役員という大役を担っているわけです。そうでなければそもそもお声すらかかりませんので。
言わばこれらの会社は、日本の家事代行サービスを牽引する会社と言っても過言ではありません。やはり安心感は高く、満足できる可能性は高いと考えられるでしょう。
認証制度を取得していれば一定以上の業者である可能性が高い
これまでにも記載したとおり、認証制度を取得していれば一定以上のクオリティを持つ業者だと証明されます。第三者機関が関わっていますので、不正に認証を取得することもできません。
ひいては信頼性も担保されており、安心できる可能性は高いでしょう。
余談ですが、一度は認証制度を取得していても、維持コストにより更新しない会社もあります。現時点で認証されていなくても、過去に認証されたことがあれば比較的安心できそうです。
例えば業界大手のカジタクさんは2019年4月に返上、東京世田谷の経堂ケアサービスさんも最近返上されてますね。
普通の正会員やアソシエイト会員は!?
ただの正会員なだけなら、明確な優位性はありません。しかし現実としては有名企業が非常に多いんですよね。私も元々知っていた会社がかなりあります。
わざわざお金を支払ってまで協会に加盟する理由は何でしょうか。それはより多くの情報を得て、より良いサービスを提供したいということだと思います。
つまり全国家事代行サービス協会に加盟する会社は、意識高い系の会社も多いのではないかと考えます。
ただ、言うまでもありませんがアソシエイト会員に関しては「これから」の会社となるでしょう。営業年数ばかりがやたら長くて意識が低い会社よりは将来性はあるかもしれませんが。
結論:一概に良しとするのではなく判断材料の一要素として
全国家事代行サービス協会に加盟している・認証制度を受けている等は、安心できる要素となり得ると思います。
ただ、一概にそれだけで絶対的なものとして判断してしまうのは早計でしょう。○○だから絶対に大丈夫!ということは家事代行業界ではありません。
実際には来てくれるスタッフさんの力量・接客も大きいですので。
あくまで判断材料の一要素とし、トータルで判断することが大事だと思います。
まとめ
以上、全国家事代行サービス協会および、認証制度などについてご説明しました。家事代行業界の中では(法人対象では)唯一の協会であり、第三者機関も交えた認証制度もあり、希少な存在と言えます。
すでに述べたとおり、絶対的なものではありませんが、判断の参考となる要素となるでしょう。
個人的には、今後も認証制度の加盟業者がどう増えていくのか、どう信頼度に影響していくかもウォッチしていきたいと考えています。
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